【相談内容】老後資金はいくら必要ですか?
「都市部在住の共働き夫婦です。夫は40代前半会社員(年収600万円)、妻は30代後半派遣社員(300万円)で、小学校高学年の子どもが1人います。毎月数万円をコツコツ貯金していますが、この先子どもの教育費などもかかるので、老後資金をきちんと貯められる自信がありません。どうすればよいでしょうか?」
回答するのはこちらの専門家!
◆得能達/ウェルスナビ
とくのう・たつ。ウェルスナビ リサーチ&クオンツチーム マネージャー。全自動で資産運用をおまかせできるロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」の研究・開発をしている。「働く世代に資産運用を広げたい」との思いから、2023年にウェルスナビに入社。一橋大学大学院経営管理研究科修士課程修了(MBA)。日本証券アナリスト協会 認定アナリスト。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。2児の父。趣味は家計簿記帳と、マニアックな投資の実践。
「いくらかかるかわからない」が不安につながる
教育費のねん出もある中で「老後資金を準備しないと……」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。そもそも「いくらかかるかわからない」ということも、不安を増幅させてしまいますよね。
老後資金のめやすを知ることから、まず始めてみるのはいかがでしょうか。
「老後2,000万円問題」って、そもそも何?
「老後2,000万円問題」が以前話題になったように、かなり大きな金額を準備しなければならない、というイメージもあるでしょう。そもそもこの「2,000万円」はどのように算出した数字かをみていきます。
これは、主に退職後の無職世帯(夫65歳以上・妻60歳以上)の平均的な生活を例に、1か月あたり約5万円の赤字が生じる、という試算に基づいています(※1)。
主な収入となる年金や退職金と、実際の支出との差から、「年間60万円が赤字が30年間続くと、2000万円が必要」という計算です。
2,000万円という金額を見ると驚いてしまいますが、これはあくまで平均像にすぎません。実際には、住まいやライフスタイル、家族構成などによって必要な金額は大きく変わります。まず大切なことは、ご自身のケースに当てはめて考えることです。
※1……金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf
退職後の無職世帯は、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみ。
理想の老後を送るための「生活費の目安」
まず、老後の支出について考えていきましょう。収入やライフスタイルによって必要額は異なりますが、目安となるデータもあります。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人で「最低限必要」と感じている月額は平均で約23万円でした。さらに、旅行や趣味など「ゆとり」をもった老後を想定すると、月に約38万円が必要、と考える人が多いようです(※2)。
このように、理想とする暮らしによって必要資金が変わります。「どんな老後を送りたい?」とイメージする時間を持ち、「これくらいなら安心」と思える金額の目安を知っておくうえで、ヒントにしてみてください。
※2……公益財団法人生命保険文化センター「2022年度 生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/2022honshi_all.pdf
老後資金づくりに資産運用の選択肢も
次に、将来受け取れる年金はいくらくらいなのかもみていきます。
厚生労働省の公的年金シミュレーター(https://nenkin-shisan.mhlw.go.jp/)を使えば、ご自身の年金見込み額を手軽に試算できます。
「想像より少ないかも」と驚かれるかもしれません。「預貯金と年金だけで老後資金を準備できるだろうか」と心配される方もいるかもしれません。現在のような物価上昇が続くと、預金の「実質的な価値」が目減りしてしまうリスクもあるのです。
そこで、おすすめしたいのが「資産運用」という選択肢です。
相談者さんは、月に数万円を貯金に回しているとのこと。老後資金に向けての貯金は、資産運用にまわすのはいかがでしょうか。
毎月3万円を積み立てて、仮に利回り3%で20年間運用していくと、最終的な資産は約985万円になります。これは、コツコツ貯めた元本720万円に、約265万円の運用益がプラスされた計算です。
また、老後資金と教育資金で口座をわけてためるのもおすすめです。目標額にどれくらい近づいたかがわかるので、続けやすくなります。
まとめ
老後資金と聞くと、とても大きな金額が必要なように思えて、不安になるかもしれません。ですが、実際は「毎月の不足分」にあらかじめどう備えるか、ということです。
まずは、年金シミュレーターで将来を「見える化」したり、家計を見直したり。そして、無理のない範囲で「資産運用」という選択肢も視野に入れてみてください。
無理のない範囲で準備を始めることが、将来の安心につながるのではないでしょうか。
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