【相談内容】今回のお悩みは住宅ローンの繰り上げ返済について
住宅ローン金利が上がると聞きました。住宅ローンの繰り上げ返済をすべきか、それとも資産運用にお金を回すべきかで迷っています。(47歳・会社員)
解説するのは……
◆堀内明子/ウェルスナビ
早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。日本証券アナリスト協会認定アナリスト。2級ファイナンシャル・プランニング技能士
ポイントは「運用利回り」「住宅ローン減税」「団信」の3つ
住宅ローンを変動金利で借りている方は、金利が上がるというニュースにハラハラしているかもしれません。変動金利は借り入れている間に金利が変わるもので、調査によると約77%※1の方が選んでいます。
※1 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2024年10月調査)」
ハラハラするぐらいなら繰り上げ返済してしまおう、というのも一つの考え方ですが、その前に3つのポイントについて説明させてください。
それは「住宅ローン金利と運用利回りとの比較」「住宅ローン減税」「団体信用生命保険(団信)」です。
住宅ローン金利よりも運用利回りが高ければ、資産が増やせる
インターネットで「住宅ローン金利・比較」などで検索してみると、変動金利で1%以下の数字が並びます(2024年2月現在)。一方で、国内外の株や債券に幅広く投資をしたとすると、長期では年4〜6%程度の運用利回りが期待できます。この差はまだ大きいです。
一例として、私たちの年金を運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、国内外の株式と債券で運用し、23年間の平均収益は年率4.36%※2となっています。
※2 「2023年度の運用状況」
住宅ローンを繰り上げ返済するよりも幅広い資産で運用した方が、資産を増やせる可能性が高まります。
住宅ローン減税の額は、残高の大きさに連動する
住宅を購入すると、最大13年間、住宅ローン減税が受けられます。毎年の住宅ローン残高の0.7%分を減税してくれる※3、というお得な制度です。
※3 省エネ基準に適合した住宅が対象、借入限度額あり、中古住宅の場合は10年間
繰り上げ返済をすると住宅ローン残高が減りますので、その分、減らせる税金も小さくなります。
団信は万が一のときの備えになる
住宅ローンを組むときは、原則として「団体信用生命保険(団信)」に加入します。住宅ローンの契約者が死亡あるいは高度障害を負ったとき、住宅ローン残高が0円になるという保険です。
万が一があったとしても、遺族の住まいを守ることができ、住まいを売って現金にすることもできます。つまり、家計の備えとして活用できます。
繰り上げ返済をして残高がゼロになると、団信の活用はできなくなります。
繰り上げ返済と資産運用のメリデメを整理
住宅ローンは借金ではありますが、低金利で借り入れができ、減税の制度があるなど、借りておくことのメリットもあります。
メリットとデメリットを確認して、どこに自分の大切なお金を振り向けるかを考えていきましょう。
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。