寝室の押し入れ
新しいアパートに引っ越して数週間が経ちました。
生活にはすぐに慣れましたが、寝室にある小さな押し入れがなんとなく気になるような……。
引っ越し初日から何か異様な感覚がありましたが、仕事が忙しいこともあり、すっかり忘れていました。
ある夜、ベッドで眠ろうとしていると、押し入れの扉が少し開きました……。
「風が入っただけだろう」と深く考えずに扉を閉めたのですが……。
妙にザワザワとした寒気を感じました。
次の日、会社の同僚に話すと、「幽霊のしわざかもね」と冗談めかして言われました。
私は笑って済ませましたが、内心では不安でいっぱいになってしまいました……。
押し入れの向こう側
深夜、再び押し入れが開く音がしました。
今回は大きく扉が開き、暗闇の中から冷たい風が吹き込んできました。
驚いて飛び起き、おそるおそる扉を閉めようとした瞬間!
青白く、か細い手が私の手首を掴んできました……!
か細いその手は、見た目に反して力強く私を引っ張ってきます。
精一杯抵抗をしても、どんどん引きずり込まれます。
手首には爪が食い込み、骨がきりきりときしんでいます。
恐怖で頭がいっぱいでしたが、なんとかその手を振りほどくことに成功!
すぐに、押し入れの扉を力いっぱい閉めました。
その夜は一睡もできず、ただ朝が来るのを待っていました。
次の日、大家さんに事情を話し、押し入れの中を見てもらいました。
大家さんは慎重に調べましたが、特に異常は見当たりません。
しかし、大家さんは困惑した表情で語り始めました。
「じつは、前の住人も同じことを言っていました。押し入れの中に何かがいるって。
その方もすぐに引っ越してしまって……」
その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍って動けなくなりました。やっぱり、この部屋には「何か」がいるのです。
押し入れには「何か、得体のしれない存在」が潜んでいるに違いありません。
結局、その日から私は寝室を使っていません。
リビングで休むことにしました。
それ以来、押し入れの扉が勝手に開くことはなくなりましたが、あの夜の出来事は鮮明に覚えています。
あのとき、あの手に引き込まれていたらどうなっていたのでしょうか……。
すぐに、私は再び引っ越しました。
もちろん、押し入れのない新しい部屋です。
※この記事は読者から寄せられた体験談やご意見を元に、一部編集を加えて作成しています。
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