素行の悪い新人「モラハラ受けた!」と社長に直談判。悪いのはどっち?【弁護士が解説】

素行の悪い新人「モラハラ受けた!」と社長に直談判。悪いのはどっち?【弁護士が解説】

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読者から寄せられたリアルなトラブルを弁護士が解説します。裁判にできるのか?勝ち筋はあるのか?【職場関係トラブルに悩むAさんの場合】

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監修者
森崎 秀昭
  • 弁護士法人C-ens法律事務所代表弁護士
  • 森崎 秀昭

2005年3月、立教大学法学部法学科 卒業。2014年3月、C-ens法律事務所 設立。日本スポーツ法学会所属。「お客様の本質的な幸福や成長のために」を理念に、丁寧なサービスを提供している。
専門分野は、企業法務、スポーツ・エンターテインメント法務、IT法務、労働問題、相続、男女問題、借金問題、消費者被害、教育関連、美容・健康関連など

森崎 秀昭 プロフィールへ

新人の素行が悪く、社員全員が手を焼いています……

とある女性による相談。

「職場に入ってきた新人の素行や態度が悪く、元々いた社員がどんなに手を尽くしても態度を改めませんでした。

全員が諦めてこの人に関わるのはやめようと思ったところに、その方が弁護士を立てて『自分は被害者だ、モラハラを受けている』と社長に言ってきました。 その方が働いていたのはたったの2ヶ月です。

そのうち1ヶ月は注意や気にかけたりもしていましたが、2ヶ月目からは全員諦めて、その人はいないものとして仕事をしておりました。 1ヶ月経たないうちに全員が参ってしまって、抑鬱状態や自責にかられて自分が辞めた方が良いのではないかと考えてしまうような精神状態になってしまっていました」

この場合、悪いのは会社側になってしまうのでしょうか?

新人の態度に会社全員が困り、挙句の果てには弁護士を立ててきたといいます。

「この場合、2ヶ月目のこちらの態度を話に出されてしまったら、100%こちらが悪いことになってしまうのでしょうか?

職場内のモラハラが原因の場合、示談になった際の相場が知りたいです。

また、裁判を起こした場合、その方にどんな利益などがあるのでしょうか?裁判と示談だとどちらが金額的に相手に多く支払いがあるものでしょうか。 正直不服でしかありませんが……」

弁護士の回答は?

弁護士法人C-ens法律事務所代表弁護士

◆森崎 秀昭
2005年3月、立教大学法学部法学科 卒業。2014年3月、C-ens法律事務所 設立。日本スポーツ法学会所属。「お客様の本質的な幸福や成長のために」を理念に、丁寧なサービスを提供している。
専門分野は、企業法務、スポーツ・エンターテインメント法務、IT法務、労働問題、相続、男女問題、借金問題、消費者被害、教育関連、美容・健康関連など

いわゆる問題社員の対応は悩ましいですよね。

私も実際に問題社員に悩まされ対応したこともあるのでご心情お察しいたいます。さて、下記にご質問に合わせてコメントさせていただきますね。

1.この場合、2ヶ月目のこちらの態度を話に出されてしまったら、100%こちらが悪いことになってしまうのでしょうか。

お気持ちはわかりますが、残念ながら、完全に無視をして相手に精神的苦痛を与える行為は、いわゆるモラハラになってしまいます

2.職場内のモラハラが原因の場合、示談になった際の相場が知りたいです。

これはお相手がどの程度の被害を受けたかによって大きく変わってしまうので、正直悩ましいです。

例えばですが、暴言などでうつ病になったようなケースでは慰謝料300万円と弁護士費用30万円が認められたような裁判例もあります。

もちろん、暴言と無視は違いますし、裁判と示談は状況が違いますが、お相手が大きな精神疾患などに罹患した場合には、こちらの判例と近い金額になってもおかしくはありません。

他にも扇風機を当てられ続けたり殴打や侮辱をされたケースで数十万円の慰謝料や治療費、休業損害などが認められたものもございます。

示談におきましては、通常このような判例をベースにしながら、示談金額などを検討しますので、参考になりましたら幸いです。

3.また、裁判を起こした場合、その方にどんな利益などがあるのでしょうか。

示談の際に、会社から提示された金額が相場より低い場合には、裁判をすると、裁判所がより高額な慰謝料を示してくれるなど、会社とズムーズに合意できないときには経済的なメリットは大きいと思います。

もう1つ、裁判所が明確にモラハラがあったなどと判決で書いてくれるとお相手としては、会社が100%悪いという認識になって、自己満足感が得られるということはあるかと思います。

4.裁判と示談だとどちらが金額的に相手に多く支払いがあるものでしょうか。

ケースバイケースにはなると思います。

裁判では裁判官が公平の観点から慰謝料額を定めますので、おおよそ相場に沿ったものになり得ると思います。

示談では、会社が早期解決や裁判の負担を軽減するのために金額を増やすなどもある一方で、お相手が早期解決を求めて低額な示談金でも承諾するケースもございます。

営業や交渉と同じで、双方の優先順位次第で金額が変わるのが示談になります。

弁護士としての見解

問題社員の対応は非常に悩ましく、かつその1人のせいで、既存の優秀な人材が疲弊して、組織として破綻に導かれてしまう可能性もあります。

厳密には、準備とある程度の時間をかけて、退職勧奨などで辞職をしてもらうのが一番ですが、急を要する場合には、慰謝料を払ってでも強引に辞めてもらうことも必要になります。会社としての中長期的な視点での人事戦略という視点で、一定程度の損失覚悟で動くことも重要です。

ただ、無駄な費用を支払うのも悔しいので、本来であれば事前に専門の弁護士に相談しながら戦略をねっていただきたいところでした。

ご質問をいただいた方も、今回の件で相当悔しく疲弊しているものと思います。そうであれば、早期解決のために会社として、ある程度の支払いは覚悟の上で示談でまとめていただくのが最適な方法かと思います。

その際には、交渉の妙などもありますが、過去の判例なども参考にしながら、相手が納得できる話しの運びで進めていただけたらと思います。

どのような話の運びが良いか悩まれたら、こういう時こそ専門の弁護士に相談してみてください。 

 

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