豆知識♪味噌は材料や作り方によって多様多様
日本人に馴染み深い発酵食品「味噌」。味噌汁や鍋、炒め物など毎日の食卓で食べる機会が多いかもしれませんね。
味噌の歴史はとても古く、飛鳥時代にルーツとなる“醤”が中国から伝わったのが始まりとされています。アミノ酸・ビタミン・酵母・乳酸菌などが含まれているので、現在でも健康に良い食品のひとつとして人気です。
大豆・麹菌・塩を基本の材料として作られるシンプルな味噌ですが、使用原料・配合・熟成期間などによって、さまざまな種類が生まれます。また生産地域の気候・風土によって微生物(麹、酵母、乳酸菌など)の動きに影響をもたらし、実に多様な味わいになるんだとか。
米味噌・麦味噌・豆味噌は原料の違い
米味噌・麦味噌・豆味噌は、使用原料の違いで分類されています。
- 米味噌……米麹と大豆を発酵熟成させたもの。北海道・本州を中心に全国的に最も種類が多く、全体の約8割が米味噌と言われていますが、色や味の違いはそれぞれです。
- 麦味噌……大麦などを使用した麹菌と大豆を発酵熟成させたもので、田舎味噌と言われることも。主に九州地方に多く、中国・四国・関東などの一部でも作られています。
- 豆味噌……大豆に麹菌を直接つけたもので、主原料は大豆のみ。愛知県・三重県、岐阜県で多く生産されています。米味噌・麦味噌に比べると、暑い夏場でも酸化しにくいことから広まったと言われています。
- 調合味噌・合わせ味噌……2つ以上の味噌を合わせたものを指します。
味の違い
味噌にも辛口・甘口・甘の種類が存在します。これは作る過程で配合される、塩や麹の量によるもの。
一般例として塩の量は、全体に対して5〜7%(甘)、7〜13%(甘口)、11〜13%(辛口)程度。
また塩の量が同一なら、麹の割合(麹歩合)が高いほうがより甘口に。
米味噌・麦味噌は、麹歩合が高いと米・麦の持つ甘みがもたらされ、甘みが強まります。
色の違い
味噌の色の種類は、赤・白・淡色の3つに大きく分別されます。色の違いは発酵熟成中に起こる化学反応(メイラード反応や褐色反応とも)によるもので、味噌の熟成期間が影響しています。
一般的に発酵・熟成期間が長いほど色や旨味が濃くなり、短いほど色はつきにくく味もまろやか。商品になった後も味噌が色濃くなるのは、この化学反応のためです。
それ以外に、大豆の加熱方法や発酵中の手入れ(切り返し・かき混ぜるなど)も、ちょっとずつ味噌の色に変化を及ぼしているそうですよ。
料理で使い分けても便利♡日常使いにおすすめの味噌の選び方
いろいろな種類の味噌がありますが、スーパーにもいろんな商品があって、どれを選べば良いか迷いますよね。
できれば日常使いしやすく、かつ本当に美味しい味噌を使ってみたいもの。
ここでは、味噌を選ぶときの2つのポイントをご紹介します。
味の好みで選ぶ
まず、味噌選びで一番大切なのは味の好み。
たとえば甘口好みなら、パッケージに記される原料名で大豆よりも麹菌となる「米・麦」が前にあると麹歩合が高いものとなり、より甘口に。商品によっては麹歩合を示す割合(例:10割麹味噌、30割麹みそなど。より高いほうが甘い)が示されているものもあるので、それに注目してみてもいいでしょう。
注意したいのは、必ずしも色が濃いものが辛口であるとは限らないということ。
辛口味噌は、塩分の割合が高いものです。同時に麹歩合が少ない味噌は甘さが控えみになるので、塩分と麹のバランスはこだわりたいところ。
また原料となる塩の質によっても、含まれるミネラルの量が異なり割合が落ちることもあるそう。
素材の味わいをそのまま楽しみたい人は、無添加かどうかのチェックも忘れずに。
料理で使い分け
料理に合わせて、味噌を使い分けするのもおすすめです。
もちろん、料理にも好みの味付けがあるので、それに合う種類の味噌を選ぶのが前提。でも悩んだときは、味噌の特徴に合わせてみてもいいでしょう。
たとえば、味噌汁に使うもので悩んだら旨味・甘みのバランスが良い合わせ味噌を。旨味の強い豆味噌や辛口味噌なら煮込み料理や魚・肉料理との相性も良いです。口当たりがまろやかな上品な味噌なら、ダイレクトに味を楽しめる味噌だれやおかず味噌などにしても美味しいですよ♡
日本全国にある味噌の種類と特徴をご紹介♪
味噌の種類は、地域ごとによっても特徴が異なります。日本人でも、それぞれのエリアで好みがけっこう分かれることがあり、多様なご当地味噌が存在。
ここでは、特色のある各地の味噌をご紹介します。それぞれの味や色、作り方などの特徴に触れながら、おすすめの料理の使い分け方法も見ていきましょう♪
(※ご紹介する味噌は、それぞれの代表的な特徴を挙げています。場合によっては、他の色や味わいのものが販売されているケースもあります。)
北海道味噌(北海道)
北海道味噌…米味噌・辛口・赤
北海道の気候・風土に合うように作られた「北海道味噌(ほっかいどうみそ)」は、クセがなく万人受けする味です。これは開拓のために全国から多くの人が移住し、どの地域の人でも食べやすくしたためだと言われています。
近年では白味噌も多くなっていますが、伝統的な中辛赤味噌が北海道味噌の特徴。
北海道味噌は辛口ですが、長期の熟成と切り返しを行うことで、すっきりとしたマイルドな味わいに。北海道には味噌を使用した郷土料理の種類が豊富で、味噌ラーメン、ちゃんちゃん焼き・石狩鍋などが有名。素材の味を引き立ててくれるので、北海道味噌はどんな料理にも使いやすいです。
津軽味噌(青森県)
津軽味噌……米味噌・辛口・赤
長期熟成された「津軽味噌(つがるみそ)」は、独特な旨味を持ちます。なかには3年も期間を置くものもあるそう。
寒いエリアの津軽味噌は、塩分が高め・麹歩合低めの辛口。でも、十分熟成されているので、コクがあって後味も比較的すっきりの赤味噌です。
青森のご当地料理・帆立貝焼き味噌などのように、魚や肉の味噌焼きを楽しんでも美味しいでしょう。津軽味噌の深みのある味わいは、料理の隠し味や合わせ味噌にもおすすめです。
信州味噌(長野県)
信州味噌……米味噌・辛口・淡色
現在、日本で流通する味噌の約4〜5割を占める「信州味噌(しんしゅうみそ)」。
その背景には戦国時代の武田信玄による味噌作り奨励や、関東大震災後の救援物質としての好評判などがあり、全国的に普及していったとされます。スーパーなど市販品でもよく見かける有名な味噌ですね。
信州味噌は、やや酸味のある芳香とさっぱりとした旨味が特徴の辛口。野菜・肉・魚・チーズなど、どんな食材とも相性が良く、一個あるといろいろなシーンで役立ちます。
越後味噌(新潟県)
越後味噌……米味噌・辛口・赤
「越後味噌(えちごみそ)」の大きな特徴は、味噌汁にしたときの“浮き麹”。これは米麹の粒で、精白した丸米を使うことで起こります。なお新潟の味噌は、上越・中越・下越・佐渡などによっても特徴が少しずつ異なり、ご紹介しているのは越後味噌は上越タイプ。
すっきりとした辛口赤味噌ですが、米麹の甘みもほのかに感じられます。やはりおすすめなのが、浮き麹を体験できるお味噌汁。ぜひ、試してみてくださいね。
江戸甘味噌(東京都)
江戸甘味噌……米味噌・甘・赤
美しい光沢のある赤黒い見た目が特徴的な「江戸甘味噌(えどあまみそ)」。麹歩合が高く塩分控えめで、濃厚な甘みがあります。
江戸時代に開発されてから、東京・江戸の味として広く愛されてきました。戦時中には贅沢品として禁止されてしまいましたが、現在でもその味は受け継がれています。
江戸甘味噌は、甘みを活かして田楽味噌や味噌ピーナッツのようにおやつとしていただきましょう。
他にも動物の臭みを抑えてくれる作用が期待できるので、豚汁・サバの味噌煮・炒め物の隠し味などいろいろな用途での活用が可能。
味噌汁にするときは甘みが強めなので、慣れない人は他の味噌と調整したり具材を選んだりするのがおすすめですよ。
相白味噌(静岡県)
相白味噌……米味噌・甘口・淡色(白)
静岡県駿河地方には、信州味噌と白味噌の中間的な味わいを持つ「相白味噌(あいじろみそ)」があります。ルーツは、京都の白味噌を真似して作ろうとしたことがきっかけだとか。現在では、製造メーカーも限られる珍しい種類のご当地味噌です。
相白味噌は、麹の甘みと大豆の風味が感じられる上品な風味が特徴。味噌汁をはじめ、魚の煮付けや味噌けなどどんな料理にも合う甘口味噌です。
東海豆味噌(愛知・三重・岐阜などの東海圏)
東海豆味噌……豆味噌
「東海豆味噌(とうかいまめみそ)」とは、愛知県・三重県・岐阜県の中京地方で食される豆味噌の種類のこと。名古屋味噌・八丁味噌・三河味噌などが挙げられます。
原料が大豆のみなので、よりタンパク質が豊富。伝統的な工程で作られる豆味噌は、長期保存にも適しています。
見た目の色が濃く甘みが少ないですが、塩分は辛口米味噌ほど高くありません。渋みや苦味を感じても、熟成期間が長いので濃厚な旨味があり、しっかりとした味わいを楽しめます。
名古屋の名物グルメ・どて煮や味噌煮込みうどん、みそかつ、みそおでんなども、豆味噌の定番料理。味噌汁もおすすめで、濃いめのだしや強い旨味を持つ素材をより引き立てますよ。
御膳味噌(徳島県)
御膳味噌……米味噌・甘口・赤
「御膳味噌(ごぜんみそ)」は、昔、阿波(現在の徳島県)藩主の御膳に差し出されたことからその名前がついた由緒正しき味噌。
辛口味噌とさほど変わらぬ塩分濃度ですが、麹歩合が高く熟成期間も長いことから、豊かな旨味とコクが楽しめます。
お味噌汁やお鍋に使うのもおすすめですが、そのままでも口当たりが良いので、焼き味噌やおかず味噌として食べるのも美味しいですよ。
関西白味噌(大阪・京都などの関西圏)
関西白味噌……米味噌・白・甘
関西地方の味噌の種類として有名なのが「関西白味噌(かんさいしろみそ)」。白味噌とも言われます。
かつて宮中に献上したのが始まりとされ、西京味噌は、白味噌の代表的な銘柄です。
短期熟成型で、塩分は低く麹の割合が高い白味噌は、甘みの強さが最大の特徴。
白味噌を使ったお雑煮は、関西風雑煮とも呼ばれてとても有名な定番料理。他にも西京焼きや懐石料理など、京都の料理には欠かせません。甘みが好みなら、和え物や味噌漬けにしても美味しくいただけるでしょう。
九州麦味噌(九州圏)
九州麦味噌……麦味噌・甘口/辛口・赤褐色〜淡色
「九州麦味噌(きゅうしゅうむぎみそ)」は田舎味噌とも言われ、九州地方で主に食されている味噌の種類です。甘口が多いですが、一部地域では辛口も作られています。
九州はもともと米より麦の生産が盛んなことから、麦味噌が主流になったそう。麦原料で、ミネラル豊富なのも魅力です。
味わいは、麦の持つ風味が感じられ、本場では甘みがしっかりあるものが好まれます。
味噌汁をはじめ、九州グルメの冷汁・もつ鍋にもぴったり。炒め物や肉の下ごしらえにも向いています。
いろいろな種類の味噌を使い分けて料理をもっと楽しみましょう♡
製造方法によって、たくさんの種類がある味噌。色や見た目はもちろん、味もそれぞれ違うので、好みに合わせて料理の使い分けをするのもおすすめです。
いろんな味わいを楽しめるいくつかの種類の味噌を常備して、毎日の食卓をもっと豊かに彩ってみてはいかがでしょうか♪
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。