訪問
昔からの親友から突然の電話がありました。電話をとると少し震えるような声が聞こえてきました。
「最近、部屋に奇妙な影が出るんだ。誰かいるみたいで怖くて……」
親友は古いアパートの和室に住んでいます。私は彼の不安を和らげるため、一晩泊まりに行くことにしました。
到着すると、親友は憔悴しきった表情で私を出迎えました。部屋に入ると、古びた畳の匂いが鼻をつきます。
親友は畳の上に布団を二組敷き、「ありがとう。心強いよ」と安堵の表情を浮かべました。
夜が更けていきます。私たちは電気を消し、それぞれの布団に横になりました。
しばらくすると、親友の寝息が聞こえてきます。安心したのか、ぐっすりと眠っているようでした。
うごめく影
真夜中過ぎ、私は何かの気配で目を覚ましました。部屋の隅に、濃い影を見つけます。
最初は目の錯覚かと思いましたが、それは徐々に人型に変形していくのです。
恐怖で体が硬直する中、影はゆっくりと私たちに近づいてきます。
声を上げようとしましたが、喉から音が出ません。
影は親友の方へと向かっていきます。
私は必死で手を伸ばし、親友を起こそうとしますが、間に合いません。
影は親友の上に覆いかぶさり、ゆっくりと彼の体に吸収されていきます。
私は恐怖と絶望感で震えながら、その光景を見つめるしかありませんでした。
目を覚ました友人
やがて、影は完全に親友の中に消えました。
静寂が戻った部屋の中、私は震える手で親友の肩を揺すります。
「大丈夫?何かあった?」
親友はゆっくりと目を開け、私を見つめます。
「うん、何もなかったよ。よく眠れた」
彼は平然と答えました。
しかし、その瞳の奥に、見知らぬ何かが潜んでいるのを私は感じました。
それは親友の目つきではありません。親友の体を借りた、別の何かが私を見ているのです。
「本当に大丈夫?」
私が再び尋ねると、親友は不気味な笑みを浮かべ、こう言いました。
「むしろそっちこそ大丈夫?」
その言葉と共に、視界の端で私の影が揺らめくのが見えました。
そして、私の影も徐々に人型に変形し始めたのです。
※この物語はフィクションです。
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