13階の資料室
私が大手広告代理店に入社したばかりの新入社員の頃、先輩から奇妙な噂を聞かされました。
「13階の資料室には近づかない方がいいよ、呪われているらしいからね」
その言葉を聞いたときは、まさか本当だとは思いもしません。
しかしある日の夕方、上司から指示がありました。
「13階の資料室で過去の企画書を探してきてくれないか、急ぎの案件なんだ……」
私は不安を感じながらも、エレベーターで13階に向かいました。
廊下に足を踏み入れた瞬間、冷たい空気が肌を刺します。
資料室のドアを開けると、部屋中に埃っぽい匂いが漂っていました。
「早く見つけて、さっさと戻ろう」
そう自分に言い聞かせながら、棚を探していると、突然部屋の電気が消えました。同時にドアが大きな音を立てて閉まります。
「だ、誰かいますか?」
声を震わせながら呼びかけましたが、返事はありません。
不安に思いつつも携帯のライトで周りを照らすと、目を疑う光景が広がっていました。
幽霊社員
無数の半透明な人影が、デスクに向かって黙々と作業をしているのです。
よく見ると、彼らは皆、かつてこの会社で働いていた人たちでした。
幽霊社員たちは私に気づくと、一斉にこちらを向きました。
「この仕事、終わらないんだ」 「手伝ってよ、頼むよ」
幽霊たちの声が、頭の中で反響します。
私が断ろうとすると彼らは私を取り囲み、仕事を強要してきました。
冷たい手が私の体を掴み、デスクに座らせようとします。
必死に抵抗する私。しかし、幽霊たちの力は想像以上に強く、少しずつ彼らの世界に引きずり込まれていく感覚がありました。
そのとき、はるか遠くから、鳥のさえずりが聞こえてきました。いつの間にか朝になっていました。
幽霊社員たちは、朝日を恐れるように、徐々に薄れていきました。気がつくと、私は資料室の床に倒れていました。
見覚えのない封筒
ほっとして自分のデスクに戻ると、そこには見覚えのない封筒が置かれていました。
恐る恐る開けてみると、中には13階の資料室で見た幽霊社員たちの顔写真付き社員名簿が。
そして、最後のページをめくった私は、愕然としました。
そこには、私自身の名前と顔写真が追加されていたのです。
※この物語はフィクションです。
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