鏡に映る影
夕暮れ時の学校。部活を終えた私は、忘れ物を取りにロッカールームへ向かいました。
生徒のにぎやかな声で溢れる昼間とはうってかわって、静寂に包まれた校舎に、何とも言えない不安感が漂っています。
薄暗いロッカールームに足を踏み入れた瞬間、背筋に冷たいものが走りました。
鏡に映る自分の影が、どこか不自然に見えます。影は私の動きに合わせず、まるでこちらをじっと見つめているかのようです。
「ここから出なくては……」と本能的に感じて、戸惑いながらも急いで部屋を出ようとしましたが、扉が開きません。
焦りと恐怖で高鳴る心臓。振り返ると、影が少しずつ近づいてきています。
私はパニックに陥りながら必死に出口を探しますが、さらに影が迫ってきていました。
やがて影は私のすぐ後ろまで迫り、低い声で囁きます。「ここから出られない……」
恐怖に打ち震えながら、鏡の前に立ちすくむ私。影は次第に形を変え、古い制服を着た少女の姿となりました。そこで初めて、かつてこの学校で行方不明になった生徒だと気がつきました。
少女の霊は私に取り憑こうとし、鏡の中から手を伸ばしてきます。
私の腕をつかむ力は凄まじく、引き込まれそうになる体。絶望の叫びを上げ、最後の力を振り絞って逃れようとした瞬間、扉が開きました。
脱出
友人が扉を開けて駆け込んできたのです。私の叫び声を聞いて駆けつけてくれたのでした。友人は私を鏡から引き離し、二人で急いで外へ逃げ出せたのです。
学校の廊下で息を整えながら、私は友人に感謝しました。
「何があったの?」と尋ねられましたが、私は言葉にできずただ震えるばかり。
後日、部活の顧問に事情を説明してロッカールームの鏡を調べてもらいましたが、異常は見つかりませんでした。
練習に励むのも良いが、休息もしっかりとるように。と言い残して顧問は帰ってしまいました。
あの出来事は私の気のせいだったのだろうかと頭をよぎりましたが、掴まれた腕に残った青黒い跡が、現実に起こったことだと私に知らせます。
今でも鏡を見るたびに、あの影のことを思い出し、恐怖が蘇るのです。
私は今でも、鏡に映る自分の姿に、あの少女の囁きを重ね合わせてしまいます。
心の奥底で、いつまでも怯え続けているのです。
※この物語はフィクションです。
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