「地震だ!机の下に隠れる」は間違い?専門家に聞く本当に安全な場所

Baby&Kids / Life style

こんにちは、防災アドバイザーの山村武彦です。

みなさんは普段、防災対策をされていますか?世界で起こる地震の約2割は、日本で起こっています。

地震大国である日本で暮らす限り、地震への備えをすることは必須。あなた自身や家族の命を守るのは、あなたしかいないのです。

連載では、地震をはじめとする防災について、わかりやすく解説していきます。

今回は、私が防災についてメディアに出たり、講演をする際によくいただく質問と、地震大国である日本で暮らすにあたっての心構えを解説します。

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地震が来たら、机の下に入ると安心って本当?

「地震が来たら、机の下に入ると安心って本当ですか?」


「『地震=机の下に隠れる』は絶対安全ではありません。」



地震が来たら机の下に……と考える方が多いのは、小学校の避難訓練で「地震が来たら机の下に隠れましょう!」と習ったからかもしれません。

それしか方法のない時や、時間がない時はそれでも良いと思います。

原則は、小さな揺れを感じたり緊急地震速報が来たら、安全ゾーンへ移動し、身の安全を確保することが大切です。

安全ゾーンとは、転倒落下物の少ない、閉じ込められない場所なので、必ず机の下という訳ではありません。

阪神淡路大震災で現地を取材した際、玄関だけ残っている家を多く見ました。玄関は比較的に狭いところに太い柱が多くあるからです。

古い木造家屋の場合は、1階が潰れてしまう場合もあるので、机の下より、すぐに外に出られるようにドアを開け、外部へ脱出してください。

また、古い木造家屋の2階にいる時に地震が起きたら、あわてて1階に降りないようにしてください。2階の方が、潰れても隙間ができやすく、助かる率が高いからです。

昔は、「地震に強いのはトイレ」と言われていましたが、最近の家はほとんどがユニット形式で、太い柱がない場合が多いです。

壁に囲まれ、出入り口が一箇所のトイレでは、閉じ込められてしまう可能性もあるので、地震時にトイレにいる場合は、急いでドアを開けて、玄関などの安全ゾーンへ移動しましょう。

電車に乗っている時に地震が起こると脱線するって本当?

「電車に乗っている時に地震が起こると脱線するって本当ですか?」


「必ず脱線するとは限りません。」



現在の鉄道は、「早期地震検知システム」を採用している場合が多いので、必ず脱線するとは限りません。

システムがいち早く小さな揺れ(P波)を検知して、自動的に非常ブレーキがかかり、続いて来ると予想される大きな揺れ(S波)が到着する前に、列車を緊急停車させる仕組みになっています。

もちろん、小さな地震の揺れを感じたり、緊急地震速報が鳴ったら、手すりや吊革にしっかりとつかまり、大揺れに備える姿勢が大切ですよ。

地下鉄のトンネル内には、高圧電線などがある場合が多いので、慌てて線路の上へ飛び出すのは危険です。

緊急時には、原則として係員の指示を待ちましょう。

ただし、火災の発生や浸水の恐れがあるにも関わらず係員の指示がない場合は、周囲の人と協力し、自分たちの判断で非常用コックを開いて避難しましょう。

「地震」と「火事」

揺れを感じた時にキッチンにいたら、目の前のガスの火を止めるのは基本です。

ただし、火元から離れていたら、その場で自分の身の安全を確保しましょう。

昔は「地震だ!火を消せ!」が合言葉でしたが、今は「地震だ!まずは身の安全!そして、消火!」に変わりました。

また、停電が復旧した後に起こる通電火災にも、注意が必要です。

阪神淡路大震災では、地震から数日後に電気が復旧した地域から、火災が発生しました。その多くが、壊れた配線器具や電気器具からの通電火災と考えられています。

通電火災を防ぐためにも、避難するときはブレーカーを落とすことが大切ですが、最近では、揺れを感じて遮断する感震ブレーカーを取り付けることが勧められています。

命さえ助かれば、なんとかなる!

命が助かれば、その後はなんとかなるものです。

失ったら取り返しのつかない命を守るために大切なのは、正しい知識、覚悟、そして準備と訓練です。

小さな揺れでも、大揺れの前触れかもしれないという心構えで安全ゾーンへ移動することが大切です。

たとえ空振りでも、普段から小さな揺れや緊急地震速報を防災訓練と思い、安全ゾーンへ退避する人は、いざという時も動くことができます。 

人は、「どうせ大したことはないだろう」と何もせず、楽な方を選びたがります。

いつか大きい地震が来ると思っていても、実際に普段から訓練と思って行動している人はほんの一部。

地震災害の現場を50年見てきて、助かった方と犠牲になった方の差があるならば、それは建物の安全性とわずかな行動の差だと感じています。

助かるための正しい行動がとれるように、命を守る訓練をしましょう。

命を守るには、〈避難路の確保〉と〈安全ゾーンの設定〉が重要です。その場の状況に合わせた行動を選択する訓練が大切なのです。

常に「ここで地震が起きたら、どこが安全ゾーンかな?」と考えたり、家族で話し合いましょう。

防災は「段取り8分」

防災は、段取り(事前)で決まります。

地域や学校などの避難訓練の他に、在宅避難訓練をするのもオススメです。

【大きな地震が起きた時に想定される条件】

・社会インフラ(電気・水道・ガス・電話など)が断絶
・道路が損壊して宅配便が届かず、店舗も閉鎖
・電車・バスなど、公共交通機関が停止
・停電のため立体駐車場が動かず、車は使用不可

この条件を想定してみると、実際に地震が起こった時に何が必要になるかなどを、身を持って体感することができます。

・照明が消えると、室内が暗く、懐中電灯がないと移動も困難
・トイレが使えない
・ガスが出ない
・冷凍室のものが溶け始め、生物は傷み始める
・電話が通じず、TVがつかない

などの状況を体験するためにも、できれば実際にブレーカーを切って、在宅避難生活などをしてみましょう。

新しい発見が、きっとあるはずです。

防災に関するアンケートを実施します。

ご回答いただいた方の中から抽選で5名さまに、私の著書「大震災発生!公的支援がくるまでの200時間を生き延びる知識と知恵」と、オススメの防災グッズ「命の笛」をセットでプレゼントします。

結果を元に、今後シリーズで防災・防犯についての知識をご紹介していきますので、お楽しみに。

※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。

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山村 武彦/防災アドバイザー

山村 武彦(やまむら たけひこ)

【肩書き】
防災アドバイザー

【略歴】
新潟地震(1964年)を契機に防災アドバイザーを志す。以来、地震、津波、噴火、水害、竜巻、土砂災害等250か所以上の現地調査を行う。災害をなくすことはできないまでも、準備と訓練で被害を少なくする事は出来ると信じ、災害現場の教訓を伝える努力を続けている。
 阪神・淡路大震災(1995年)発生時は2時間後に現地入りし救助活動などを行う。近年も東日本大震災、オクラホマ竜巻災害、フィリピン台風30号災害、広島土砂災害、ネパール地震、熊本地震などの調査を行い、写真レポートをサイトにアップしている。現在も執筆・講演などを通じ防災意識啓発に活躍中。

【受賞】
科学技術振興功績者として科学技術庁長官賞受賞(1995年)

【歴任した主な役職】
消防庁防災訓練活性化研究会委員 
研究開発型企業連絡会議議長 
関東学院大学非常勤講師 
防災対策評価委員会幹事など

【所属学会】
日本災害情報学会
地域安全学会

【主なメディア出演】
NHK:「ニュースウオッチ9」「ゆうどきネットワーク」
TBSテレビ:「ニュース23 」「ひるおび」「朝チャン」
テレビ朝日:「ワイドスクランブル」「やじうまプラス」
日本テレビ:「ズームインサタディ」「ザ・サンデー」
フジテレビ:「スーパーニュース」「めざましテレビ」
海外紙:ル・モンド(仏)、ニューヨークタイムス(米)
海外テレビ:BBCテレビ(英)、CNNテレビ(米)等

【主な著書】
「災害から命を守る準備と行動・スマート防災」(ぎょうせい)(2016年3月)
「みんなの防災事典」(PHP研究所)(2015年5月)
「新・人は皆『自分だけは死なない』と思っている」(宝島社)(2015年4月)
「近くの人が近くの人を助ける、近助の精神と防災隣組」(きんざい)
「富士山の噴火は始まっている」木村政昭氏との共著(宝島社)
「防災・危機管理の再点検ー進化するBCP(事業継続計画)」/(きんざい)
「山村流 災害・防災用語事典」(ぎょうせい)
「目からウロコの防災新常識」(ぎょうせい)
「感染弱者のための新型インフルエンザ対策」(アニカ)
「防災格言・命を守る百の戒め」(ぎょうせい)
「災害に強い企業をつくる「事業継続計画(BCP)の取組と留意点」(りそな総合研究所)
「非常本」(アニカ) 
「中小企業に役立つ事業継続計画」(日本商工経済研究所)
「マル得マガジン・我が家の防災対策・DVD」(NHKエデュケーション) 
「本当に使える企業防災・危機管理マニュアルのつくり方・災害現場からみつめたBCP」(きんざい) 
「大震災発生!公的支援がくるまでの200時間生き延びる知識と知恵」(小学館) 
「人は皆「自分だけは死なない」と思っている防災心理学」(宝島社)
「大震災!これなら生き残れる」(朝日新聞社) 
「不安列島、闘う防災術」(銀河出版) 
「大地震!そのときどうす」(五月書房) 
「我が家の防災手帳」(銀河出版) 
「大地震、今日からできる生活革命」(五月書房)など