留学生のCちゃん
「怖いからもう辞めたい……」
彼女は開店直前の店に入ってくるなりそう訴えました。
声の主は中国からの留学生Cちゃん。ツヤツヤのロングヘアの可愛い女の子。
近所に住んでいることからこのスナックで働き始め、入店してまだ2〜3ヶ月ほど。
意思疎通はきちんとできるのに、カタコトの日本語が可愛いと人気でした。
「あの人のことか……」
すぐにママや私はピンときました。
お客のA村さん
常連客のA村さんは、40代独身のバツゼロ。
お金のかかる趣味もなさそうで、マンションは持ち家、自由になるお金はそこそこあったように思います。
ただ恋愛経験は乏しいらしく、外見も冴えない感じ。
失礼ですが、決してモテるタイプではないように見えます。
そんな彼が一目惚れしたのが、留学生の彼女だったのです。
思い込みの強さと、久しぶりの恋愛感情に突き動かされ、彼女の出勤日はほとんど来店。
たびたび同伴し、休日も1回会えたと嬉しそうに自慢していました。
もちろん彼女には店外デートの記念にプレゼントもしたといいます。
予兆
1ヶ月ほど前、留学生Cちゃんは帰り道に誰かにつけられていると訴えるようになりました。
「近づいてくる足音が怖くて走って帰ったけど、絶対つけられてる」と。
Cちゃんの家は歩いて5分程度だったこともあり、ママも「夜も遅いから気をつけてね」と言うだけで、深刻に考えてはいませんでした。
その間もA村さんは機嫌良く来店し、必ず日付が変わる前には「明日も早いから」と帰っていきました。
恐怖の手紙
そんなことが続いたある日、Cちゃんの家の郵便ポストにA村さんから直筆の手紙が届いていたのです。
住所を教えたこともないのに……。これは尾行犯確定です。
その手紙には、こんなことが書かれていました。
自分たちが付き合ってもう数ヶ月が経ったこと、Cちゃんとの結婚も考えているということ、国籍は違うけど真剣に将来を考えてほしいといったことなど。
Cちゃんは話すことはできますが、読み書きはまだまだ不自由。
長文の手紙を解読できません。内容を要約してあげると「付き合ってない、好きじゃない」と表情は嫌悪感でいっぱい。
思い込みと勘違い、LINE等で意思疎通ができていないことなどから食い違いが起こっていたのでしょう。
それからもA村さんからのしつこい付きまといと手紙攻撃により、Cちゃんは店を辞めてしまいました。
さぞかし日本人の中年男性が気持ち悪かったのでしょう。
ママも注意はしていたのですが、A村さんは「自分たちが付き合っている」という主張を曲げることはありませんでした。
結論
夜のお店はキャバクラでもガールズバーでもスナックでも同じ。
お客様の「あわよくば感情」で成り立っている部分も大きいです。
でも、恋愛経験の少ない男性の期待を煽るのは危険と隣り合わせ。
のちにニュースなどで悲惨な事件もいくつか耳にしました。
きっかけは同じく、色恋営業と勝手な思い込みです。
なにごともバランスが大切、そう身に染み出来事でした。
◆Natsuko Ota
大阪在住。
過去に高級ラウンジから下町のスナックまで様々な形態の水商売経験あり。
あらゆる職業•属性の人と接してきたため否応なしにコミュ力を鍛えられてきました。
現在も、性別年齢問わず毎日かなり多くの人と話す機会があり、人間観察能力もかなり高いと自負しております。
観察眼を生かした鋭い分析力で楽しく執筆していきます。
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