——結婚前に、嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が発覚したそうですね。
そうなんです。お医者さんから「妊娠しにくい体質です」と言われ、かなり落ち込みました。
そのときに初めて、自分のライフスタイルを振り返ってみたのですが、仕事に集中するあまり、私の体は「男性脳」に支配されていた気がするんです。
女性が男性と同じ土俵に立ってバリバリと働く現代社会では、日々のストレスや生活習慣の乱れなどが、不妊を引き起こす要因のひとつになるとも言われています。
女性らしい、妊娠しやすい体質を取り戻すため、今は体のことを優先して仕事を休むべきだと思いました。
しかし、それがわかっていても舞台の仕事が好きでやめられず……。頂く出演オファーを断って、「しばらく休みます」と言う勇気がどうしても出なかったんです。
——夢中で仕事に取り組んでいる時期には、キャリアにブランクができることを想像するだけでも恐いですよね。
まさにその通り。今まで積み重ねてきたものがすべて無駄になってしまうような感覚にとらわれ、愕然としてしまいました。
そんなある日、悩んでいる私の姿を見て、父が言葉をかけてくれたんです。
「これまで自分が積み重ねてきたものは、たった数年で崩れてしまうものなの?そうじゃないでしょ?」って。
確かに、自分が手に入れたキャリアは、たとえブランクができたとしても、自分の努力次第でまた取り戻せるはずなんですよね。
父の言葉に背中を押してもらい、しばらく芸能活動を休む決意をすることができました。
——休業中はどのような思いで過ごしていましたか?
休んでいた期間は、テレビ出演では1年なのですが、19歳のときから出演し続けてきた舞台でいえば3年にもなるんです。
大好きな舞台に立てない月日の中には、もちろん不安もありましたが、これを乗り越えた先にある人生の方がはるかに長いわけで。
体の調子を整え、妊娠・出産をして、新しい家族と過ごす未来の幸せを考えたときに、このブランクは全然長くないと思いました。
——不妊治療をされている方の中には、自分の年齢や周囲の妊娠・出産を目の当たりにすると、焦る気持ちをもつ方も多いと思うんです。
嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が発覚したときには、「なぜ、みんなには赤ちゃんができているのに、私だけ……」と、とても複雑な気持ちになりました。
その後、妊娠することができてとても嬉しかったのですが、今度は産休中に、人気の舞台に同年代の女優さんが出演している姿を見て羨むようになってしまい、一時は大好きな舞台を見に行くことをぱったりとやめてしまった時期があったんです。
辛い、悲しい、嫌だ……。人はその時々で、さまざまな感情に捉われます。
そういう自分の心の声に素直であって良いと思いますが、ただ落ち込んでいるばかりではなく、これから先はすべて良い方向に繋がっていると信じて前を向くことが大事!と、何ヶ月か経った時に気持ちを切り替えることができました。
その姿勢こそが、明るい未来を引き寄せるカギになるはずなんです。
今にして思えば、PCOSでは不安な思いをしたけれど、あの感情があったからこそ、子どもができたときの喜びと感動はこの上なく大きかったと、どこか懐かしく思い出しますね。
——療養中、ご主人からはどのようなサポートがありましたか?
夫は、「もし子どもができなかったら、2人の人生も良いじゃない」という感じで、穏やかに見守ってくれていました。
そんな彼が側にいてくれたからこそ、私もリラックスした気分で、できることを自分のペースで続けられたのだと思います。
——体質改善のために実践していたことを教えてください。
とにかく、体を冷やさないようにしました。
体を温める作用のある根菜類を温野菜にして食べたり、ハーブティなどリラックスできる温かいドリンクを飲んだり(好きなビールは我慢しました……)。
服装にも注意して、夏場でも常に腹巻と五本指ソックスを身につけていましたね。
他にも、女性ホルモンの活性に効果的なローズの香りを、暮らしの中にアロマとして取り入れてみたり。
ゆったりとした優雅な気分になれるので、おすすめですよ!
女性の活躍の場が広がる一方で、妊娠・出産のタイミングとキャリアの間で悩む方も多いはず。
父である大和田獏さんの言葉によって、休業する決意ができた大和田美帆さん。
インタビューのvol.4では、妊娠・出産を経験し、育児をする中で、どのような目標を立てていらっしゃるのか。そして、3年ぶりの舞台復帰に向けた思いなどを伺います。お楽しみに♪
インタビュー・文|中山理佐
撮影|細谷 聡 (MetroSpace Inc.)
撮影協力:SHIROKANE | LOUNGE
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