自称・バツイチ独身岩崎さん
夜のお店では、自分の情報をわざわざ正確に話す必要がないと思われるお客様も多くいらっしゃいます。
実際は「名前や職業が聞いていた情報と違っていた」なんてことも少なくありません。
ところが、一人の男性客、しかもかなりの常連さんの嘘に衝撃を受けたことがあります。
彼は“岩崎さん”とみんなから呼ばれていました。
明るい性格で、うるさくはしゃぐタイプではないですが、よく話してくれるいいお客様でした。
仕事で海外に行くことが多く、各国の事情や文化に詳しい40代半ばのバツイチ独身。
海外に行くたびにお土産を持参してくれる、優しく気遣いのできる人という印象で、週に1回ぐらいのペースでご来店いただけていました。
その店はアットホームなスナックだったので、常連さんたちと店のキャストで花見やバーベキューを開催するなど、イベントもよく行われていました。
岩崎さんもたまに参加されていて、なんとなくファミリー感すらあったのです。
消えた岩崎さん
ところが、あるときからパタリとお店に姿を見せなくなってしまいました。
LINEもアカウントごと消去されていて、他店に行っているという情報もありません。SNSもしていないので、そこから探ることも不可能です。
心配ではありましたが、どのあたりに住んでいるかもわからず、確認のしようもありませんでした。
岩崎さんの真実
そんなある日、九州から出張で来ているというお客様から衝撃の話が。
たまたま廊下に飾っていた、花見の時の写真の岩崎さんに見覚えがあるというのです。
しかも、彼は九州では別の名前を名乗っていました。
「別人じゃないのか」と何度も確認しましたが、外見の特徴は完全に一致していると。
私たちが知っていた出身地や出身大学、仕事内容、年齢、何もかもが違うのです。
身体的特徴や話し方は、ほぼ本人に完全一致しているのに、情報のすべてが別人のもの。
自分を良く見せるために、出身大学や仕事で嘘をつくのは理解できます。
ただ、岩崎さんは出身地から兄弟構成、経歴のすべてが嘘だったのです。
何のための嘘だったのか、理解できません。
誰も得しない、どうでもいい情報までも嘘をつく理由が思いつかないのです。
九州で語っていたことも、おそらく真実ではないでしょう。
国際スパイ説
その後、キャストの間で彼は「国際スパイ」だったのだろうということに結論づけました。
自分の情報を明かすことは「組織」から禁じられていたのでしょう。
きっと、日本での任務は終わったのです。その後岩崎さんを見た人は誰もいません。
※記事に使用している画像はイメージです。
◆Natsuko Ota
大阪在住。
過去に高級ラウンジから下町のスナックまで様々な形態の水商売経験あり。
あらゆる職業•属性の人と接してきたため否応なしにコミュ力を鍛えられてきました。
現在も、性別年齢問わず毎日かなり多くの人と話す機会があり、人間観察能力もかなり高いと自負しております。
観察眼を生かした鋭い分析力で楽しく執筆していきます。
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