元日テレキャスター・岸田雪子さん

【元日テレキャスター・岸田雪子さんインタビュー】仕事と両立しながら叶える幸せな子育てとは

Baby&Kids / Life style

現在、中学2年生の息子さんを育てている岸田雪子(きしだゆきこ)さんは、ジャーナリスト、キャスター、妻。そして、ママというさまざまな顔を持っています。多忙な日々の中で、岸田さんはどのように仕事と子育ての両立をしているのでしょうか。そして、その日々の中で岸田さんが意識している「幸せな子育て」とは、どんなものなのでしょうか。

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2022.01.31

たくさんの人の協力があってこそ、仕事と子育ての両立は成り立つ

岸田雪子

▶︎元日本テレビ報道局解説委員。現在はフリーでキャスター、ジャーナリストなど幅広く活躍する岸田雪子さん。

————仕事と子育ての両立に悩む読者ママは少なくありません。岸田さんは、どのようにお仕事と育児を両立されていますか?

両立ができているとはとても言えないのですが(笑)、妊娠してからこれまで、仕事と子育てをなんとかやりくりしてきましたが、とても私一人が頑張ることでどうにかできるものではありませんでした。息子はもちろん、家族、職場の人、保育園の先生、たくさんの方たちの存在、協力があってこそ、仕事と子育ての両立は成り立つものだと思っています。

————岸田さんの著書『スウェーデンに学ぶ「幸せな子育て」子どもの考える力を伸ばす聴き方・伝え方 』の中にも、“人間は、本来は「共同で繁殖する」、「集団で子育てをする動物」なのです”という一文がありますよね。岸田さんが、それを実感した具体的なエピソードはありますか?

妊娠するまでの私は、寝る以外の時間はすべて仕事をしているような生活をしていましたが、妊娠・出産を機に特に夜間の仕事はセーブすることに。自分で選んだことだから、その中で精いっぱいやらなくてはいけないという気持ちで自分を追い込んでいた時期がありました。その頃は、息子にも職場にも謝ってばかりだった気がします。

例えば、夕方のニュースは19時に放送が終了するので、この時間帯の番組に関わっていると保育園のお迎え時間が遅くなります。迎えに行くと、荷物を背負った息子が玄関で待っていて、「ごめんね、ごめんね」と言いながら迎えに行く。私だけではなく、当時の会社の後輩たちの中にも両立に悩んでいる姿を見てきました。

————「わかる、わかる!」となっているママたちがたくさんいそうなエピソードですね。

正直、会社を辞めることも考えました。でも当時の上司から「仕事と子育てを両立できる働き方の道を、後輩のために作ってみて。そして、自分の経験から得た考えを放送にも生かしてみて」と言ってもらえたことがありました。この言葉はとても大きかったです。他にも「夕方のニュースの視聴者には子育てをされているお母さんも多いのに、ニュースを届ける側がハッピーな子育てができていなくて、ハッピーな生き方や役立つニュースって本当に届けられないでしょう」と言ってくださる方もあり、ハッとしたんです。後輩たちのためにも、今辞めちゃいけないのかな、と。

————まわりから理解を示してもらえるのはすごく心強い!

会社を辞めるという選択肢もあった中で、「やってみよう」と背中を押してくれた上司がいたことはすごく恵まれていたと思います。もともと子どもが好きで、子育てや子どもの発達にも興味があった私が、実際に母となり、息子の成長を目の当たりにする日々の中には、「これまで見たどんな歴史的なニュースよりも感動する!」と感じたシーンがたくさんあります。そういった感動を、男性も女性もできるだけ見逃すことなく仕事と子育てが両立できる環境を作りたいと考えるようになりました。

————岸田さんが働いていた環境の中では、どのような取り組みが効果的でしたか?

報道は24時間体制でニュースをカバーする特殊な職場でしたが、その中でも少しずつシフトを区切り、情報を共有するように努めました。情報共有ができていれば、いざというときにサポートができますし、早く帰る人が感じる後ろめたさを少しは減らすことにもつながります。その仕組みを作ると、これで救われるのは子育てをしている人に限らないということもわかってきたんです。介護している人、病気がある人、不妊治療している人。それぞれが、プライベートも大事にできる働き方ができる職場にしていきたいと考えました。周囲のサポートへの感謝の心を忘れないことも大切ですね。

子育ても仕事もできた部分をママ自身が認めてあげる

岸田雪子

————すごいですね!岸田さんの職場では、そういった取り組みが可能でしたが、なかなか理解されない環境で悩んでいるママも多いと思います。

子育てに関しては、女性が背負いやすい部分でもありますし、その上で職場に対して「変えていきましょう!」と声を上げるのはしんどいと思います。できれば、女性が背負いやすいということを、子育てに関わっていない世代の人たちも理解をしていき、「お互いさま」という気持ちで関わっていく、理解していくということで、仕事と育児を両立しやすい環境ができていくのではないかと思います。「お互いさま」という思いやりを持って行動したことは、後々自分にも返ってくることがたくさんあると思います。

————確かにそうですよね。一人で苦しんでいるママたちに、岸田さんが言葉をかけるとしたらどんな言葉をかけますか?

子どもを育てることは、とても大切なお仕事だと思います。日本ではお母さんに負担が偏りがちですが、“自分だけがやらなきゃいけないものではない”という気持ちを持つこと、そして、100点満点ではなくても、できた部分を自分で認めてあげてください。お母さんって、どうしても自分のことを後回しにしやすいと思いますが、自分のことを大切にすることで気持ちにゆとりが持てて、子どもの良い面に目を向ける余裕が出てくると思うんです。そして、自分の理想の子育てや良い親でいなくちゃというところから視点をずらして、設定するハードルを下げてみてあげることも大切だと思います。

親支援プログラム「ポジティブ・ディシプリン」って?

岸田雪子

————子育てをする上で、子どもの良い面に目を向ける余裕を持つことはとても大切ですよね。そのためにはやはり、親に対しての支援は欠かせないものだと思います。著書の中でご紹介されている「ポジティブ・ディシプリン」について教えてください。

「ポジティブ・ディシプリン」は、日本を含む世界36カ国以上に普及している、親支援プログラムです。

  • 我が子がどんな子に育ってほしいかという長期的な目標
  • 子どもが安心できる環境を守り、子どもが理解できるよう情報を与えること
  • 子どもの考え、感じ方を理解すること
  • 課題の解決

この4つの柱をベースに子育てをしていこうというものです。また、「ポジティブ・ディシプリン」の中に親と子の気質に着目するというものがあります。

————「気質」を知ることで、子育てに変化はありましたか?

息子は、何かを一度はじめると納得するまでやめられず、気持ちの切り替えが大変なタイプでした。うまくいっているときはいいですが、うまくいかなかったときはこれがとても大変。でも、「ポジティブ・ディシプリン」で気質を調べると、粘り強い、根気強い気質だと捉えることもできるとわかりました。気質を知ることで、息子に合った言葉をかけてあげられるようになりました。そして、親の気質も知ることができるので、自分の気質、子どもの気質を知って、それぞれ違う気質なんだということを理解すると、いろんなことが楽になるし、おおらかに子育てができるようになります。結果、それが「幸せな子育て」につながるので、気質を知ることはすごくおすすめです。

子どものおかげで世界が広がった部分がたくさんある

岸田雪子

————岸田さんが考える幸せな子育てをするために、著書にある「聴き方・伝え方」以外で行っていることはありますか?

サッカーをしている息子がケガをしたときに、「Look on the Brightside」という言葉を伝えました。「物事は1つの角度からだけ見るのではなく、良い方からもちゃんと見るんだよ。良いことを見つけるんだよ」という意味の言葉です。いろんな人に励ましてもらったこと、そんな風に思ってくれる人がいることに気付けたのも、ケガをしたおかげだよねという話をしたときに、自分もそうだなと思ったんです。子育てをして、周りの方にどれだけ助けてもらって、支えられているということを知りました。物事の良い方に目を向けるというのは意識しています。あとは、子どもと一緒に徹底的に楽しむことです。

————徹底的に楽しむ!それもすごく大切なことですね。

子どものおかげで世界が広がった部分がたくさんあります。家族で雪山トレッキングをしたことがあって、山に登って雪原で寝転がるんですけど、目の前に広がる真っ白な世界と青い空を眺めながら、息子がいたおかげで見られた景色だなと思ったんです。親子で楽しんでいることが、その後家族の楽しい時間につながることもあるし、世界が広がる部分もあるので、とにかく一緒に楽しむ。うちは男の子なので、自分が経験したことがないことも経験できるのがありがたいなと思っています。

「意外と知らない」ことを意識する

岸田雪子

————子育てをしていると、知らず知らずに力が入り、間違った方向に頑張ってしまうことは多くのママたちが経験していることだと思います。そんなママたちに必要なメッセージがたくさん詰まった岸田さんの著書、『スウェーデンに学ぶ「幸せな子育て」子どもの考える力を伸ばす聴き方・伝え方』の中で、特に岸田さんがおすすめの部分はどこですか?

タイトルにある「聴き方・伝え方」は、具体的な声かけの例をたくさん載せているので、そのまま使えて、効果を感じていただけたらと思います。この部分は、この本で注目されやすいところですが、「子どもが見ている世界」をのぞく「子どものメガネ」をかけるという部分もおすすめです。「ポジティブ・ディシプリン」の根底にあるのは、子どもの発達や気質などを知ることの大切さです。我が子のことは知っているつもり、というのが意外と弊害になって「どうしてこんなことするの!」というイライラにもつながりやすいので、「意外と知らないんだよね」ということを意識することが、幸せな子育てにつながるキーポイントになると思います。

————最後に、岸田さんから子育て中のママたちへメッセージをお願いします。

子どもが寝た後、寝顔を見ながら反省するということがありますよね。私も毎晩そうです。夜中の寝顔に感じた反省を次に活かして、それに気づいたことがまず進歩だと自分を認めてあげてください。子育ては学びです。人間は、死ぬまでずっと発達していくもので、親も日々発達しています。今日うまくできなかったことは、明日できるために必要だったんだと考え、「じゃあ、どうすればいいんだっけ?」を、1日1個でもいいから発見していくことで、うまくいくようになることは増えていくと思います。

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ライターである私も一人のママ。7歳の娘を育てる立場として、岸田さんのお話はとても興味深いものばかりでした。子育てのために必要だとインプットした情報も、日々追われる中でつい忘れてしまいがちです。岸田さんのお話や、著書『スウェーデンに学ぶ「幸せな子育て」子どもの考える力を伸ばす聴き方・伝え方』の中には、これを知っているだけで子育てが楽になるヒントがたくさん詰まっています。忘れた頃に見返して大切なことを思い出す。躓いたときに見返してパワーをもらう。そんな、子育て中のすべての人に寄り添ってくれる、お守りのような一冊です。

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スウェーデンに学ぶ「幸せな子育て」子どもの考える力を伸ばす聴き方・伝え方

親の「声かけ」が、子どもの可能性を引き出し育てる。世界で注目されている親支援プログラムと発達心理学、伝えるプロの経験から生まれた、画期的“親子コミュニケーション術”を伝える1冊。具体的なケーススタディも満載です。親だけががんばらなくていい!「よい親になること」よりも「よい親子関係を築くこと」それがこの本で大切にしていることだそう。

◆岸田雪子
きしだゆきこ。1970年4月2日生まれ。東京出身。早稲田大学法学部卒業、東京大学大学院情報学環教育部修了。1993年に日本テレビに入社し、24年間報道一筋で社会部記者、政治部記者として活躍。『真相報道バンキシャ!』『NEWS ZERO』の立ち上げに携わり、国際政治やスポーツ含むあらゆるニュースの取材、演出を手掛ける。2004年からはキャスターを務め、後に『スッキリ』『情報ライブ ミヤネ屋』などのニュースコーナーを担当。現在はフリーで活動しテレビ朝日系『中居正広のニュースな会』などに出演中。2018年出版著書『いじめで死なせない』(新潮社)、2021年出版著書『スウェーデンに学ぶ「幸せな子育て」子どもの考える力を伸ばす聴き方・伝え方』(三笠書房)。

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Photographer : Chiai
Writer:Kahori Uehara
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