「予防できる病で命を落とすなんてアホらしくないですか?」
ー堀江さんがなぜ胃がん撲滅のピロリ菌検査啓蒙活動のプロジェクトを行っているのか、お伺いしても良いですか?
堀江貴文さん(以下堀江さん)
「いや、単純に医療ビジネスに興味があって。本質的にいろいろなことに興味があるんですよ。4yuuu!などのメディアにも興味ありますしね。
一口に医療ビジネスといっても、 iPS細胞を使った再生医療など色々あります。
僕は医者じゃないので、いきなり医療法人などを作ることはできないんですけど、友人に医療法人の理事の人や医者がたくさんいるので、その人達とコラボして”カンゾウサプリ”を作ったりもしてますよ。」
堀江さんは、自身のメディアである「HORIEMON.COM」の「WITH」で、最先端の科学技術や医療技術について、各界の研究者やイノベーターに堀江さんがインタビューしたりと、「HORIEMON.COM」には医療メディアとしての側面もある、といいます。
「その中の一つとして、ピロリ菌の権威の先生にインタビューをすることができて、胃がんとピロリ菌の相関性が高いことを知ったんです。
今、日本では、胃がんで年に4万8000人も亡くなっているんです。これを2桁までに減らせたら、凄いことなんじゃないかと。
社会的にも意義があるし、死ななくてもいい病気で死んでいく人を助けられる素晴らしい事業です。そこで、周囲の医者やピロリ菌の専門家の先生に声をかけて、このプロジェクトを立ち上げました。」
皆で検査をして予防しよう。
「日本は予防医療にお金と時間をかけない」
堀江さん:
「日本の医者って、病気になった人を治療するじゃないですか。でも、そもそも病気にならないほうがいい。
皆さん、予防接種とかはやられてますけど、致死性の病気の予防に関しては、日本でまぁうまくいってるのって、乳がん予防のピンクリボンキャンペーンくらい。これで乳がん検診の重要性が周知されましたよね。
それと同じように胃がんのピロリ菌キャンペーンやったら、面白いと思ったのもあります。
僕は、”他の人がまだやっていない社会的に意義のある面白い事業をやっていきたい”という強い想いが前提にあって、それが医療ビジネスなんですが、その中でもピロリ菌の除菌キャンペーンというのは医者でない僕たちもすぐに動けるし、社会的なインパクトも大きいんです。」
また堀江さんは、国や個人のお金が全く予防医療にかけられていない現状についても言及されました。
「TVCMを見るとよくわかるんですけど、TVCMって、病気になった後のことばかりやってるじゃないですか。入れ歯の安定剤とか。
でもあれって、歯周病になって歯が全部抜けた後のこと。じゃあ、歯周病にならなきゃいいじゃん、とかね。
現在は行動に移しやすいピロリ菌から始めていますけど、歯周病、子宮頸がん、肝炎ウィルス予防にと活動を広げていきたいですね。」
「みんな、絶対”自分はガンにならない”と思っている。リテラシーが低い。」
堀江さん:
「みんな、そもそも『自分だけはガンにならない』って思ってるからね。だから検診の受診率は低いし、みんな凄く、重大な病気に対しての危機感が薄いと思います」
ーそれは自分たちのせいですよね?
「そうです!くだらないバラエティ見てる暇があったら検診行けよ!と思うし、生命保険に入るお金があったら検診行けよ!と思います。
科学技術・予防医療についてお母さん達のリテラシーが低いのも、科学教育がつまらな過ぎたという理由もあるんでしょうが……。」
ー耳が痛いです。でも、ママ達もこうした正しい情報を知りたくないわけではないと思うんです。
「それから皆さん、ケミカルなものは全部=悪で、オーガニックは全部いい、という風に思っているかもしれないんですけど、大体、お昼の番組とかって、オーガニック&ヘルシーの話題好きじゃない?」
ー4yuuu!でもそういった記事、人気があります。
「でもさ、胃がんがピロリ菌と相関性があると知るところまではいいんだけど、それで急に○○ヨーグルトがいいとか、あのハチミツがいいとか言い出すんですよ。
ケミカルはダメでオーガニックがいい、みたいな思い込みあるでしょう?
でもあれも雰囲気なんで、科学的じゃない。ピロリ菌はちゃんと抗生物質で100%除菌しなきゃだめなんですよ。
バターとマーガリンを例にするとわかりやすいけど、30年前はマーガリンの方がいいと言われていて、今と全く逆だった。常識なんて言うのは、すぐに変わっていくんです。
胃がんの原因も、胃がん罹患率の高い秋田県は、塩分の濃い食事が主だから胃がんの罹患率も高くて、沖縄は、(食事の)塩分が少ないから胃がんで死ぬ人が少ないとか、まことしやかに言われていましたけど、実は、食事が原因じゃなかった。
単に、秋田県にいるピロリ菌と沖縄県にいるピロリ菌が違う種類だったからなんです。
沖縄って、東南アジア系の人が多いから、東南アジア系のピロリ菌を保菌していて。東北の人たちは朝鮮半島系のをもっていて。
朝鮮半島から渡ってきたピロリ菌が、一番凶悪性があるんですよね。だから東北では胃がんの罹患率が高かった。
ですから、検査してピロリ菌が見つかったら、すぐに除菌しないといけない。
細菌はすぐに倍々ゲームで増殖するので、100%殺さないとだめなんです。ハチミツもピロリ菌を半数くらい無くしてくれるかもしれませんけど、とにかく抗生物質で100%根絶やしにすることが大事です。
とにかくケミカルが悪で、オーガニックが善という考え方を忘れてください!」
ーはい、忘れます。ハチミツを過大評価し過ぎていました……。ママ達も、細菌や食品についての正しい知識を知っていなければいけないですね。
「ピロリ菌は、日本ではほとんどが母子感染。」
お話は、ピロリ菌がどのように感染するのかということに移っていきます。
堀江さん:
「昔は、日本に上下水道がない時代とかって、食べ物も糞尿が肥料になっていたし、井戸水からも感染するし、衛生状態が悪いから、高濃度のピロリ菌に常にさらされていたんですよね。
でも、今は上下水道が完備されているでしょ。だから、今のピロリ菌はほとんどが母子感染ですよ。
赤ちゃんは無菌状態で生まれてくるから、母親が咀嚼した食べ物を与えることなどによって感染してしまいます。」
ー虫歯の経口感染についての知識はだいぶ普及してきましたけど、そこにピロリ菌の発想はなかったです。一緒なんですね。
「ですから、本当はママもパパも、おじいちゃんおばあちゃんも、皆さん、(ママが)お子さんを妊娠する前に除菌したほうがいいですよ。
保菌したまま産んでしまったなら、中学生くらいで一度検査して、陽性だったら除菌すること。
大人になるまでピロリ菌を保菌していると、胃が痛かったり、胃が荒れていてガン化しやすいので、毎年、胃カメラを飲んだほうがいいですね。」
4yuuu!世代の旦那さんって、忙しかったり、面倒で検診に行かない人も多いと思います。
そこは、ママ達が大事な家族に検診を受けてもらえるよう、半ば強制的にでも行動することが大事だと感じました。
堀江さん、本当にありがとうございました!
いかがでしたか?
堀江さんのお話はとても分かりやすく、科学技術・予防医療について詳しくなくても、自分、そして愛する家族の身を守るために、ママ達が様々な分野へのリテラシーを上げていくことの重要性を教えてくださいました。
流れてきた情報や今までの常識をそのまま受け取るだけではなく、一度疑ったり、調べたりしてみることの大切さ。
そして、かけがえのない子供との時間や未来が、ガンなどの致死性の高い病気によって奪われるかもしれない、というリスクにもっと当事者意識を持つこと。
ママ達も、きちんとした科学技術や医療予防の知識を少しずつでも「知ろうとする」姿勢が大事だということが、再認識できたと思います。
堀江さんの今後の医療ビジネスから、ますます目が離せませんね。
さて、インタビュー後半は、「教えて堀江さん!本音で生きづらいママ達に、嫌われる勇気をください」と題し、著作『本音で生きる』(SB新書)が大ヒット中の堀江さんに、ママ達のお悩みを相談させていただきました!
昨今取り沙汰されている子育て法に対するバッシングや、ママも知っておきたい、上手に本音を伝える方法をわかりやすく教えてくださった堀江さん。全てのママ必読です!
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県八女市生まれ。実業家。SNSmedia & consultingファウンダー。元・株式会社ライブドア代表取締役CEO。東京大学在学中の1996年、23歳のときに、株式会社オン・ザ・エッヂを起業。2000年東証マザーズ上場。時代の寵児となる。2006年証券取引法違反で東京地検特捜部に逮捕され、実刑判決を下され服役。現在は、自身が手がけるロケットエンジン開発を中心に、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」のプロデュースなど幅広く活躍。近著に『ゼロ』(ダイヤモンド社)、『本音で生きる』(SB新書)など。最新作は『君はどこにでも行ける』(徳間書店)。